介護の仕事に転職する
最終更新日:2018年6月29日
30歳前後になって、介護の仕事もよいかもと転職活動を機会に検討する人もいます。
「介護」とひとえに言っても、様々な職種があるので、介護の仕事とはどういったものなのか、ここで詳しく解説していきます。
1. 介護の仕事でよく知られている介護ヘルパーとは?
介護の仕事というと、知名度が高い「介護ヘルパー」をイメージする人がいるかもしれません。
実際、以前は、資格として「ホームヘルパー2級」や「ホームヘルパー1級」があり、資格取得者は高齢者の食事や排泄・入浴の介助を行っていました。
こういった資格があったので、介護職といえば「介護ヘルパー」をイメージする人が多いのかもしれません。
しかし、2013年から「ホームヘルパー」という資格はなくなり、それぞれの資格は
- ホームヘルパー2級 → 介護職員初任者研修
- ホームヘルパー1級 → 実務者研修
となりました。
資格名の変更があったのは、介護の仕事に携わる人のキャリアパスをより分かりやすくし、上位の資格を取得してもらうことが期待されているからです。
介護の仕事自体は、資格を取得していないとできないわけではないので、介護現場に無資格で飛び込んで、仕事をすることもできます。
しかし、実務だけでは身につかない知識や技術もあるので、資格を取得することが求められています。
皆さんが介護の仕事に就くことを考えているのでしたら、
- 無資格で介護現場に飛び込んでみる
あるいは、
- 先に「介護職員初任者研修」の資格をスクールに通うなどして取得する
とよいでしょう。
高卒の方が、全くの未経験から介護の仕事に転職をするのであれば、この二つのルートが王道になります。
しかし、「介護職員初任者研修」や以前のホームヘルパー資格は、介護職の入り口にすぎず、介護経験を積んだり、勉強をすることで、さらに上位の資格を取得して、高度な仕事をすることができます。
介護の仕事に就けば後々目指すことになるかもしれないですし、自らのキャリアパスを描く上でも役立つので、上位の資格や仕事がどういったものなのかについて紹介していきます。
2. 介護現場での最上位資格、介護福祉士
介護職員初任者研修や実務者研修の上位資格が、国家資格である「介護福祉士」資格です。
介護福祉士は、「介護現場での最上位の資格」といわれるとおり、介護現場で高度な知識や経験を活かして介護を行います。
仕事の内容自体は、介護職員初任者研修や実務者研修を受けた人とそれ程変わりはなく、高齢者の食事や排泄、入浴の介助などを行います。
しかし、知識や経験が豊富であることを活かして、他の職員をまとめる役割を与えられたり、現場の責任者として働くこともあります。
また、給与も無資格の人に比べて月4万円程、介護職員初任者研修を受けた人に比べて、月2万円程高くなる傾向にあります。(平成25年厚生労働省調べ)
2-1. 高卒の方が介護福祉士を目指す際のキャリアパス
介護福祉士になるには、いくつか方法があります。
学校に通う方法や、実務経験を積むことで取得する方法もあります。
高卒の方が、無資格で介護の仕事経験がない場合で、学校に通わないのであれば、下のようなキャリアパスを通って介護福祉士資格を取得するのが一般的です。
- 無資格で介護の仕事をはじめる。あるいは、介護職員初任者研修を取得後に仕事をはじめる。
- 介護職員初任者研修を未取得であれば、仕事をしながら受験する(旧ホームヘルパー2級相当)
- 実務者研修を受験する(旧ホームヘルパー1級相当)
- 介護福祉士を受験する
介護職員初任者研修や実務者研修は、受験資格に実務経験が必要ないので、働く前に取得することも可能です。
特に介護職員初任者研修は、スクールに1か月ほど通うだけで取得できるので、働く前に取得しておくのもよいです。
介護福祉士資格の取得試験を受験するには、従業期間3年かつ従事日数540日以上に加えて、実務者研修を取得しておく必要があります。
ですので、介護福祉士になるには、数年はかかることになります。
一方、介護福祉士養成施設などの学校に通うと、2年間の勉強で国家試験を受験する資格が得られます。
実務を積む場合も、学校に通う場合も時間はかかりますが、介護福祉士試験の合格率は60%前後あることが多く、それ程難関というわけではないので、介護の仕事に就くのであればぜひ目指したい資格です。
ポイント!
今現在、介護福祉士資格の上位に、教育者や管理者として活躍する介護福祉士の資格として、認定介護福祉士資格が準備されています。
3. 介護のコンサルタント、ケアマネージャー
ここまで紹介してきた介護福祉士は、「介護現場」で働く人のことでした。
しかし、ケアマネージャーは、介護現場からは離れて、介護が必要な人に、どういった介護を行うのか、どういった施設を利用するのか、といった介護プランをアドバイスする仕事をしている人です。
ケアマネージャーは、介護業界のコンサルタントのような役割をしているといえるかもしれません。
ケアマネージャーになるために必要な資格は、介護福祉士を取得してから取得する人も多く、知識、実務経験ともに高度なものが求められます。
しかし、その分だけ給与も高くなり、介護福祉士に比べて月4万円程高くなる傾向があるようです。(平成25年厚生労働省調べ)
3-1. 高卒の方がケアマネージャーを目指す際のキャリアパス
ケアマネージャーになるための「ケアマネージャー資格」という資格があるわけではなく、「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格して、実務研修を受けた人をケアマネージャーと呼んでいます。
試験を受けるためには、実務経験が必要になるので、介護の仕事を何年か続けて経験を積む必要があります。
具体的には
- 法定資格を持ち、保健・医療・福祉に関する資格に関わる実務5年以上従事した人
- 特定の施設において、生活相談員・支援相談員・相談支援専門員・主任相談支援員として、5年以上、相談援助業務に従事した人
とされています。(2018年以降の受験資格)
未経験からケアマネージャーを目指す場合には、受験資格を満たすために、まずは介護福祉士の資格を取得して実務経験を積んだ後に、ケアマネージャーを目指すケースが多いです。
試験自体の難易度も高く、合格率は20%前後と介護福祉士資格に比べても非常に低くなっています。
現場で働くことだけを考えるのであれば必要のない資格ですが、将来的に、さらなるステップアップを考える際には取得を検討するとよいでしょう。
4. 幅広い人を支援する仕事、社会福祉士
ここまでは、高齢者などの介護の仕事に就くための資格を紹介してきました。
しかし、高齢者以外にも、病気持ちの人や心身に障害がある人、日常生活を送ることが困難な人など援助が必要な人が世の中にはたくさんいます。
このような身体や環境の理由で日常生活に不安がある人に、福祉サービスが受けられるように、本人やその家族に援助や相談、提案をして福祉サービスの調整を行うのが社会福祉士です。
福祉サービスの利用対象者は児童・高齢者・障害者など幅広いのですが、社会福祉士は利用者本人を直接介護することはありません。
利用者本人やその家族に総合的な援助やアドバイスを行うので、福祉施設や介護に関する全般や補助金制度など様々な相談に対処していくために、たくさんの専門的な知識が必要です。
社会福祉士になるには、毎年1回(1月下旬)行われる国家試験に合格すればなることができます。
国家試験を受験するには資格が必要なのですが、受験資格を得るためには様々なルートがあります。
最終学歴が高校卒業では受験資格がありませんが、社会福祉士を目指す方法はあります。
4-1. 高卒の方が社会福祉士を目指す際のキャリアパス
ここでは、2017年度時点での高卒転職者が受験資格を得るための方法をいくつか上げていきます。
※ここでいう実務経験は、現場で社会福祉を目指すための相談や援助などの業務で、ヘルパーなどの介護業務は含みません。
- 福祉系の4年制大学で指定科目を履修し卒業する
- 福祉系の短大で指定科目を履修し、卒業後1~2年間実務経験を積む
- 社会福祉主事養成機関(福祉系専門学校)を卒業後、2年間実務経験を積み、6か月以上短期養成施設等を修了する
- 福祉系の通信制大学で指定科目を履修し卒業する
大学や短大に進むルートは、時間もお金もかなりかかるので、高卒転職者にとってはあまり現実的な方法ではありません。
その点でいうと、福祉系の専門学校・通信制大学は、働きながら夜間や通信教育で学ぶことができるので、高卒転職者が受験資格を得るための確実な方法といえます。
どの方法にしても、高卒者が受験資格を得るためには最短でも4年はかかるので、時間的・経済的余裕が必要になります。
高卒転職者向けの資格取得方法をいくつかあげましたが、方法は様々ありとても複雑です。
下記サイト内で、資格取得ルートについて詳細が案内されていますので、参考にしてみてください。
5. 介護の資格の基本情報
ここまでは、介護福祉士、ケアマネージャー、社会福祉士などの資格について詳しく解説してきました。
ここからは、各資格の取得者数や資格取得に必要な勉強期間、費用の目安などを見ていきましょう。
5-1. 介護の資格の登録者数
- 介護福祉士 1,183,979人(平成25年 厚生労働省の登録者数)
- ケアマネージャー 596,033人(平成25年 厚生労働省の登録者数)
- 社会福祉士 165,494(平成25年 厚生労働省の登録者数)
5-2. 介護の仕事の求人数
近年は超高齢化社会と言われており、福祉関係は将来性が高い分野です。
そのため、実際に高齢者の身の回りの世話をする介護職の求人が増えています。
ですので、介護ヘルパーや介護福祉士、ケアマネージャーといった職種では求人がたくさん見つかります。
しかし、福祉関係でも社会福祉士は、介護職に比べると需要が少ない上に、一施設で求められる人員の数も多くありません。
ただし、職場は、社会福祉施設、高齢者施設、母子生活支援施設、児童相談所、保健所、医療機関など、活躍の場は多種多様にあります。
5-3. 介護資格の、勉強に必要な期間、勉強に必要な費用の目安、取得するメリット
☆介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)☆
期間 最短1か月
費用 5万円台~
取得するメリット
- 活躍できる場所が多い(介護の技術・知識を身に着けていれば、就職の際に有利になる)
- 未経験でも短時間で取得可能
- 受講後は、業務経験を積みながら介護を仕事にしてステップアップできる(介護福祉士・ケアマネージャー等)
☆実務者研修(旧ホームヘルパー1級)☆
期間 3ヶ月~(介護職員初任者研修修了者)
費用 8万円前後~(介護職員初任者研修修了者)
取得メリット
- 介護福祉士国家試験の受験資格(一部)が得られる
- 医療的ケア(喀痰吸引・経管栄養)を身につけられる
- サービス提供責任者になれる
※介護福祉士を目指す場合、2016年(第29回)介護福祉国家試験より、受験者には、実務経験に加えて、実務者研修を修了することが義務付けられました。
☆介護福祉士☆
期間 最短2か月(実務者研修修了者)
費用 3万円~(実務者研修修了者)
取得メリット
- 国家資格
- 正社員としての就職にも有利
- 就職・転職の際にも有利
※ケアマネージャーの試験の際に国家資格を取得していれば一部科目の免除を受けられるという規定がありました。
しかし、2015年以降は、「国家資格の有無にかかわらず全員が同じ問題数を解く必要がある」と制度が見直され介護福祉士の資格を持っていても免除を受けることができなくなりました。
☆ケアマネージャー(介護支援専門員)☆
期間 3~6か月
費用 3万円代~
取得メリット
- 就職・転職に有利な資格
- 仕事内容が介護プランの作成など管理側の仕事になるため、肉体的な負担なども軽くなる
- 夜勤がなく日曜や祝日も休みになることが多い
☆社会福祉士☆
期間 最短で4年
費用 787,100円~(通信制大学4年間の学費)
取得メリット
- 国家資格
- 取得の難易度が高めなので、評価されやすい
- 募集人数は少ないが、自治体で公務員として働ける(公務員試験を受ける必要あり)